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症例報告書

ある病院での出来事です。この病院は認知症の病棟と失語のリハビリ専用の病棟があり、通常、リハビリは別メニューでそれぞれに行われるのですが、たまに合同で「グループリハ」を行うことがあります。この「グループリハ」の時は、認知の病棟へ失語の患者さんを移してから行うのですが、この時、認知の病棟に、いつも車イスで窓の外を眺め、人形を抱っこしているおばあちゃんがいるんです。私は、この患者さんの表情がとても気になったので、担当者は誰かと認知のスタッフに尋ねました。(・・・ここの病院のリハは「担当制」で、患者さんは、看護師、介護福祉士、PT、OT、STの誰かが担当者となり、1か月に1度、自分が担当する患者さん毎に「症例報告書」の提出が義務付けられているので。)すると、やはり「担当者は不在」でした・・・。担当制と言っても、患者さん全員が割り振られているわけではなく、末期の患者さんや、寝たきりの患者さんには、担当者がいないこともあります。そういう患者さんは、反応も変化もないから、報告書にも変化を書きようがない。したがって、経過報告がいつも同じような内容になってしまう。・・・そういう理由から、担当者がつかないそうです。この患者さんは「Y」さん、と苗字で呼ばれていました。高齢の認知症患者が女性だった場合、旧姓との区別がつかない場合が多いので通常は苗字ではなく名前で呼ばれていることが多いのですが、Yさんは苗字で呼ばれていました。私が、Yさんの担当者を申し出ると、認知の担当医が「・・・Yさん?担当になりたい?えー?病棟、違うじゃん、だって、Yさん、知能もないし、ほぼ意識もない。それ知ってるの?Yさん、経管(栄養)だし、嚥下もできないから、STなんか、やりようがないだろ、手を抜きたいの?」・・・その言い方に、むかついたので、私は「とりあえず、所見と経過報告書は都度、出しますから、それを見て判断してください。」と言い残して、すぐその場から、立ち去りました。この方法は、とりあえず事後承諾をもらう手段です。(笑;)
さて、手始めにYさんの病室を管理している看護師にYさんの話を聞くと、何でも、誰でも、近寄るだけで強く「拒否」する性格らしく、今は、誰も近寄れない、毎日のバイタルすらとれない状態らしい。認知の看護師も「Yさんなら、止めた方がいいですよ、あの方、無理ですよ、毎日、お世話している私達でも話すらできないんだから・・・」と、諦めムード全開でした。私は、自分のカンだけを頼りに、休憩時間を使い、Yさんに意を決して近寄ってみました。Yさん、表情が死んでない、感情の自覚もあるし、感情の表現もある、であれば、他者の感情の理解もできるはずだ。たとえ、知的能力はなくても心の知能指数はゼロではないはず。そこに突破口はあるはずだ。そう、思っていました。
しかし、案の定、私が近くによると麻痺してない方の手で「シッシッ」と、あっち行けのサイン。私は、これを、完全無視、気がつかないふりをしました。それでも、Yさん、私のことが気になってきたのか、ジーとこっちを見てきました。今が、チャンスだと思いました。そして、私は、独り言を話し始めました。Yさんとの距離は30センチです。「寂しいなあ、辛いなあ、あーあ、一人で寂しいよ。」これを、数十分、繰り返しました。気が変になりそうなぐらい。すると「あ、あ、あ」と、Yさんが、私に手を伸ばしてきましたので、私は「あ、びっくりした。誰ですか?あなたは、私は知らない人を話すのが苦手なんです。」とさらにトボケました。すると、Yさん、私の手を握り、よしよし、みたいにさすってくれました。すると、遠くから、看護師たちがびっくりして集まってきました。私は、看護師たちに、来ないでくれとサインを出し、「Sちゃん、やさしいね、Sちゃん、ありがとうね」って声をかけると、Yさんは大泣きして、反応してくれました。Sちゃん、というのは名前です。私が名前で声をかけたことが思ったよりうまくいきました。
・・・あれから、3週間経ちました。私が作った「経過報告書」の最後の行です。
「350カロリーゼリー食1回、400カロリーミキサー食2回、経口摂取、むせ、誤嚥なし、完食。嚥下時、喉頭挙上あり、嚥下回数、嚥下時間正常、残留量0、むせ無、ただし、口唇閉鎖不全あり。摂食中は機嫌もよく、こちらからの問いかけには、何度も頷き応じることができた。ただし、人を限定する。」

・・・ということです。 (^-^)♪

それでは、明日のために頑張ってください。

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